素通りしちゃった言葉たち

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 受験対策・学年末テスト対策真っただ中なので、あらゆる方向から質問が飛んでくるのだが、そのような中に、生徒たちが『素通りしちゃった言葉たち』に関する質問が混じっている。

 『素通りしちゃった言葉たち』とは、いわゆる『太字』の重要語句ではなく、その周辺、その説明に用いられている言葉で、よく意味も分からないのに気にも留めなかった(調べたり、質問したりしなかった)言葉たちだ。昨日は『罷免』『割譲』『租借』なんて言葉が出てきた。

・日本国憲法 第六十八条 第二項
  内閣総理大臣は、任意に国務大臣を罷免することができる。

罷免…職務をやめさせること。免職。

・下関条約
  清は日本に対し、台湾・遼東半島・澎湖列島の日本への割譲した。

割譲…所有物の一部をさいて他にゆずること。特に一国が領土の一部を他国にゆずり渡すこと。

・ポーツマス条約
  ロシアは関東州(旅順・大連を含む遼東半島南端部)の租借権を日本へ譲渡する。

租借…ある国が、合意のうえ他国の領土の一部を一定の期間を限って借りること。

 各語句の意味はこんな感じ。

 で、こういう言葉の取り扱いって、如実に成績に反映されてるように感じる。

①周辺の語句とのつながりと漢字の意味から類推して、おおよその意味が分かり、しかも調べる。
②周辺の語句とのつながりと漢字の意味から類推して、おおよその意味が分かる。
③よく分からないので、調べる・質問する。
④よく分からないが、そのまま覚える。
⑤よく分からないが、気にしない。

 中間層くらいまでは、圧倒的に④と⑤が多い。周辺の説明文の意味の分からないまま、重要語句(いわゆる太字)だけを覚えることになるので、結局、覚えても使える状態にはならない。

 ②③になるだけで、公立中なら上位の3割くらいに入れてしまう。実際には上位の3割にだって、勉強量と能力にものを言わせて、④のように意味を知らないままに、何とかテストにだけ対応する子も少なくない。時間が有限である以上、「勉強量」を増やすことには限界があるので、そういう子は頭打ちになるのが早い。「覚えること=勉強」と思い込んでる子は多くて、理解を伴っていないことに疑問を感じることが、上位進出の第一歩と言える。②は類推の間違いを誰にも指摘できないため、本人が分かっているつもりでも、とんでもない逆方向の間違いをしてることがある。

 ①はかなり希少。公立中なら間違いなく上位1割。

 

 上の話、言い換えると、成績の差はそのまま「語彙数の差」なんだと思う。学校や塾など学習の場に限らず、普段の生活の中であっても、未知の言葉に一旦立ち止まって、類推にせよ調べるにせよ、新しい語を獲得することをしてきた子と、逆に素通りしてしまい、新しい語を獲得することをしてこなかった子の差。1日単位で見れば新しい語を獲得できる日もあればできない日もあり、大差はなさそうだが、それを10年以上積み重ねてきた結果が、今になって表れているのだと思う。

 成績を上げたいと願うのであれば、まずは私生活を含め、とにかく「未知の語」に敏感になることではないだろうか。知らないものを知らないと認識し、それを知ることに努める。それしかないように感じる。学習の場面であれば、どんな些細な事であっても、よく分からないと感じた時点で調べること・訊くことを徹底するしかない。問題集にマルが並んだかどうかではなく、教科書を読み理解できるか、意味の分からない言葉はないか、ここを徹底して潰していくしかないのではないか。ものすごく気の遠くなるような話で、一朝一夕に結果の出るような話ではないが、仕方ない。今まで生きてきた年数分を取り戻していかなくてはならないのだから、インスタントラーメンのようなお手軽さを求めてもしょうがない。しかし、ここできちんとした方法を身につければ、これから先の人生を生きていく上で、キミは常に成長を続けることになる。

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